其ノ壱

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「どうぞ、お侍様。」 胡蝶蘭が敷物を勧める。鈴村はその敷物へ腰を下ろした。 「失礼しました」 少女がお辞儀をして襖を閉める。 少女の足音が聞こえなくなったのを確認すると、胡蝶蘭は目を細めて笑った。 「本当にいらっしゃるとはねぇ、お侍様」 「気が向いたからな」 小生意気な顔になった胡蝶蘭に鈴村は少し安心すると、あぐらをかいた。胡蝶蘭もとっくに楽に座っている。 「気が、ねぇ」 くすりと笑う胡蝶蘭に鈴村は片眉を上げた。 胡蝶蘭は「何でもないですよ」と笑うのをやめる。 「小華でも呼びましょうか?」 「こはな?」 鈴村はまた片眉を上げた。 「舞を踊る華ですよ」 「ああ、なるほど」 つまり自分の財力を調べるためのものだ。 小華も呼べないような財力では華の客につくことはできないということだろう。
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