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「……ぃい」
「え?何、りえちゃん」
「かーわいいなぁ、やよいちゃんはぁ!」
そう言って、りえちゃんはうちを抱き締めた。
「うわっ!」
「ん~やよいちゃんは、あったかくてふわふわで良い匂いするね~」
「ちょっ……りえちゃん…」
内心、うちの心臓はかなり危なかった。
えっ!?
マジ照れるんですけど!
心臓保たないってコレ!
「ね~やよいちゃんは、好きな人居る?」
「えっ?……居ないよ」
「そっかぁ~やよいちゃん男苦手だもんね」
「……りえちゃんは、居るの?」
うちは、りえちゃんを上目で見つめる。
抱き締められたりえちゃんの手には、少し力が入っていた。
「………うん、居るよ。好きな人」
一気に、何かが音を立てて崩れた。
「……そうなんだ。どんな人?」
「陸上部の1個上の先輩なんだ。今も時々練習見に来るの」
「そっか!りえちゃん頑張らなきゃねっ!うち応援するよ!」
「ありがとっ!私頑張るよ!」
「そろそろ、掃除の時間だよ!」
「そうだね、行かないと」
「りえちゃん先行ってて!うちは萩野をまかなきゃ」
「わかった。じゃ、またね!」
「うん、また!」
りえちゃんを見送ってから、うちは1人踊り場で佇んでいた。
そっかぁ……りえちゃん好きな人居るんだぁ…。
……応援…しなくちゃね。
親友なら…応援するのが当たり前じゃん。
「ふっ……うぅ…」
あれ?
なんでうちは泣いてるの?
……どうして、こんなに胸が苦しいの?
「りえちゃ……。う…あっ…」
うちはしばらく1人で泣き続けた。
理由はこの時まだ、全然分かっていなかった。
いや……分かりたくなかったんだ…。
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