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シュブリシュヴィブヴァリバリバリ!!
そんな音が獅子笶の手元から出て、そろそろ白熱してきたな~とか思っていた時のことである!
「御免」
侍の声が聞こえた。
「「ぐっ……こんな時に……」」
削っている二人の額に汗が浮かぶ。
目線の先は鉛筆、意識の先も鉛筆だが、一瞬気が向いた方向は――ドア!
「御免」
侍の声が聞こえた。
その男は出入り口に、いつの間にか姿を現していた。
「御免!」
侍の声が聞こえた。
着物に帯刀。丁髷。
びっくりだ。『ちょんまげ』を漢字にすると、こんなに違和感を抱擁するとは思わなかった。
「御免!!」
侍の声が聞こえた。五月蝿い。目踏み潰すぞ。
――と思っていた瞬間には、侍の姿は視界から消え、次の瞬間には木を一刀両断したような音が聞こえ、次の瞬間に――説明めんどい。
さっきまで削っていた二人の手には、もう何も握られていなかった。
鉛筆も、鉛筆削りも、魂も、ソウルも。あと愛も。
「御免。御免、御、免御免」
え? 何て?
「『まだまだだな』。そう言ったのさ」
ソファに座った、冷や汗顔の音姉守さんは言った。
……ん? テーブルに、鉛筆が二本直立している。
「御免、御、免、御免御、免御、免、御ー」
「『二人とも、“正義”が無い』ってよ」
音姉守さんが通訳みたいだ。
うん、惚れる。侍に。
――しかし、侍に惚れるのは――テーブルに置かれた鉛筆を見てからでも――決して――全く――遅く――なか――った――
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