魅せられたKEZURI

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「ウオオオォォオ!!」  高校入学二日目。  期待と不安に胸が『イヤーンえっち、アタシの内臓見ないで!』と爆裂してしまいそうなこの時期だが、五時間目の授業が眠いのは中学から変わりなかった。  しかし、俺は机に突っ伏していた上半身を起こす。何故? そりゃあ、左の席から叫び声と言っても過言じゃない大声が聞こえてきたからだ。  シュヴリシュリシュシュリシュヴィリ!  そして、おかしな音が叫び声に重なる。  まるで、鉄と鉄を全身全霊で擦りつけているかのような音だ。いや、そんなものじゃない。悪魔と天使の骨を擦り合わせる音――とでも言おうか。言っちゃおうか。  だが、大学生ならまだしも高校生がそんなことをする訳がない。  ましては、“全力で鉛筆を削る高校生”が居る訳がない! 「オオオオオオ! セイッ! セイッ!」  叫ぶコイツ。確か、小粒 獅子笶(コツブ シシヤ)とかいう名前だっただろう。  身長はアホみたいに高く、百九十ぐらい。角刈りにガッチリとした体格が、アメリカンフットボールかアメリカンボディビルダーでもやっていそうな雰囲気を醸し出している。 「ヌェオイエオオロロロロ!!」  その男が! 長ランの、応援団か番長にでもいそうな男が!  ――縦四センチ横二センチぐらいの小さいクーピーとかを削る時に用いられる鉛筆削りで……HBの鉛筆を削っているゥゥゥ!
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