魅せられたKEZURI

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 獅子笶は右手に魔王の剣(鉛筆)を、左手に魔王第二形態の盾(鉛筆削り)を持っている。しかし、指が見えない。  ――それほどの速さで?  鉛筆を削った際に生じた木片は、すべてが鉛筆削りに入っていっている訳でもなかった。小さめの木片が、獅子笶の手の周りを舞い散っている。  いや、木片? 散っている? そんな言葉で表していいのか? いやダメだ! 本当にダメか? 本当にダメだろう! 正確に表すのならば――  美麗ここに窮まる刀を創造している際に解き放たれた、エンジェルの羽毛は息吹に乗って舞い踊る。ほら、耳を澄ませばエンジェルソングが聞こえてくるではないか。なんてビューティフルなのだろう。「セイッシャア! ウォェベラァ!」という酢的で野太い声が、俺の右耳を奈落へ落とし、左耳を地獄へフィーリングさせる。  Go to hello! 「ふひゅー……」  数秒後、獅子笶は背もたれに体を預け、一息ついた。そして鉛筆削りを、給料八千年分の結婚指輪でも入っていそうな箱に入れる。  …………。 「ゴオーーーッッルデンッ!!!」  畜生! つい感嘆の声があがっちまったぜ!  いや! いやいやいや! 別に恥じることではないぜ俺!! 何故なら、あの鉛筆は――美し過ぎるぅぅぅ!! 「ごふっ……」  テンション上がって吐血しても気にしない! ダイヤモンドと同じ炭素の芯は……黒い! やっぱり黒い! マジで黒い!  そして、ただ鋭いだけじゃない! なんと、先端が、微妙に丸く仕上がっているうぅぅ!! 例えるのなら! まるで……凄い! マジで!  そしてそしてそしてぇぇ!    ――美しい――  黒く、しかし、希望の光りで輝いて見えた。  違う言葉を使うのならば。    ――萌える―― 「ん? どうした、……スマン、名前を忘れてしまった」  獅子笶は右手に持った鉛筆から、俺へと目線を変えて言う。 「俺かい!? 俺なのかい! 俺の名前をきいているのかい!? そ、そそ、そんなビューティフルな鉛筆を持って! ……ごふっ」  うひひひひ、テンション上がってきた。机赤っ。 「月! 火! 水! 木! 金堂 (キンドウ ジョウ)だぜ!」  俺は叫んだ。人の目を気にせずに。何故なら、教室に居るのが、俺と獅子笶の二人だからだ。
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