魅せられたKEZURI

7/24
前へ
/36ページ
次へ
「俺が判定者で良いんですか?」  ソファーに並んで座る、獅子笶と音姉守さん。そして、二人の前にある低いテーブルには、二本の鉛筆と二つの鉛筆削りがある。  鉛筆は、HBで十五センチ程。それは二人とも同じだ。しかし、鉛筆削り本体は違う。  獅子笶の武器は、黄緑色の小さいヤツ。  音姉守さんの武器は、真っ黒だが普通の鉛筆削りだ。 「さあ、合図を出してくれ」  音姉守さんは、マントから右腕を出して言う。仕掛けはよく分からないが、出された腕には振袖のように大きな布がかかっていた。 「じゃあ、始めるぜ?」  この勝負――どっちが勝つのか!  そして――勝負の合図の言葉は何と言えばいいのか!  『始め』? 『よーいドン』? 『位置について』?  ……ちっ、まだ鼻血が止まんねぇぜ。 「《バイシクル・スロットル》小粒獅子笶! 舞わせて回っていざ参らん!!」 「《フェアマジック~過去の魔術士~》賽木音姉守! 爽快愉快にいざ勝負!」  どうやら、二人とも準備万端らしい。果たして、俺に吐血させられるかな? 魅せてもらおうじゃねえか! 「それでは、いざ尋常に――」  深く息を吸い込み、叫ぶ。 「――始ャタブルッ!」  吐血。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

66人が本棚に入れています
本棚に追加