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「いや待ってくださいよ」
「何だよ?何かあるのか?」
「あります!」
ある、沢山ありすぎる。
「なんでいきなりですか?」
「いきなり?いきなりじゃないさ、ちゃんと前に伏線はってる」
「いつですか?」
「前に資料がどうのこうので電話した時」
「……あ~」
したよ。
『海いこーぜ』って言われて、『いいですね、海』って応えた。
それにしたって、行く、とは言ってないけど。
あの時の事件以来なんともいえない心境だからなぁ。
「別にいいじゃねーかよー。妹さんとかあの天才ちゃんとか下僕や二重人格の奴とか連れていきゃあいいじゃんかよー!」
真さんはズカズカと部屋にあがってきて俺の肩に腕を回す。しかも向き合って。
「……なんすか?」
「誘惑」
真さんは含み笑いをする。
多分今この状況を見られたら絶対に勘違いされてしまう。
「離れてくださいよ!」
「じゃあ海いこーぜ」
「なんですかその交換条件は!?」
ま、予測は出来ていた事なのだが、買い物に出ていた遥が帰ってきたらしくドアを開いた。
「お兄ちゃんただい……」
止まる時間。
数秒間フリーズ。
「わっわ、わわわわわわ!し、失礼しましたぁ!ごめんなさい!」
遥は荷物を置くと慌てて部屋から飛び出していった。
あー……後でしっかり言い訳しないとな。
「で、どうするんだフータン」
嫌らしく笑っている真さんに俺は言う。
「わかりました、行きますよ」
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