第3章

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 目が醒めると再びベッドの中だった。いくら何でもこんな事起こるはずはない。内心ホッとして胸を撫で降ろした……  いや、撫で降ろそうとした僕の手が動かない。首も回らない。  ただ一点だけを見つめたまま、僕はただ時間が行き過ぎるのを待った。  あれからどれくらいの時間が経ったのだろう。酷く喉が渇く。風もないのに微かにカサカサと音がする。  頻りに玄関の方で何かが動いている気配はするものの、今の僕にはどうする事も出来ない。今見えている殺風景な景色は間違いなく僕の部屋だ。  急にドアが開いた。音だけで確かめられない自分が情けない。 「すみませんね、水をあげるのをすっかり忘れていました」  目の前から覗き込んでいるその初老の男には見覚えがある。マスターだ。  彼は寝ている僕を起こすと水差しから足元に水を注いだ。  躯中に水が染み渡るのが分かる。その水が頭まで到達すに従って次第に意識が朦朧としてくる。だが目を閉じる事は出来ない。目の前が段々と白くぼやけて、やがて何も感じなくなった。既に僕の意識は躯の中には殆んど残っていない。  僅かに残った意識の中にあのマスターの声だけが響き渡った。 「あなたが望んだ事です」  僕の望み……  突然鳴りだした足元に転がる携帯の音だけが虚しく部屋に響いていた。
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