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彼は、あの日は、一日だけ外出許可が降りた日だった。
バイクで出掛けて仕舞い、偶然彼女を見かけ、鍵を拾って、精一杯の微笑みを浮かべながら彼女の手の中に、鍵を渡していた。
彼に外出許可を出したのは、ターミナルケアを信条にしていた国立医大病院の院長先生であった。
彼には、突然変異な脳腫瘍が出来ていて、いつ悪化するか余談を許さない状況であった。
彼は幼い頃から夢を見続けていたバイクレーサーになった矢先の出来事。
先天性な脳腫瘍を煩ってしまい、バイクから暫く離れて入院生活を送っていた。
そんな時に、たった一日だけの外出許可が出て、羽を伸ばしたくなり、バイクをまたいでしまった。
今までバイクと共に暮らしていたのに切り離された入院生活は苦しみを伴い、人生の不幸を一片に背負い込んだ感じだった。
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