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「……♪」
ある晴れた日の午後、俺は生徒会の実務を副会長に任せてブラブラと校内を彷徨いていた。
俺より一つ下の学年の副会長には悪いが、大した仕事もないし、プリント制作くらい会長がやっても副会長がやっても同じことだ。
部活も休んではいるが、生徒会の会議だと言ってあるから部員たちが探しに来ることもないし、もし先生に見つかったとしても生徒会長としての校内の見回りですとでもいえばいい。
俺は結構この午後を楽しんでいた。
「にしても、相変わらずこの学校はうるさいなぁ…」
この私立並乃森高校は部活動の盛んな高校ということで有名だ。
グラウンドからはお馴染みの野球部やバレー部のランニングの声、アメフト部やラグビー部、アイスリンクからスケート部の声さえも聞こえる。
文化部では吹奏楽部の演奏を筆頭に、合唱部や演劇部、朗読部など運動部に引けを取らない声量だ。
そのなかで一つだけ、ここ東校舎4階の一番端に隔離された音がある。
『ピアノ特別教室』
そんな名前の付いた教室から聞こえるのは静かなピアノの音色。
ここで誰がピアノを弾いているのかなんて俺は知らない。
だけど、この音はどこか悲しいのだ。
俺はいつものように教室の前の廊下に座り込んで音を聞いた。
「…♪…♪…♪………」
あれ、今日は少しテンポが速いかな。なにか良いことでもあったのか?
いつからか、俺はピアノの音色に恋をしていた。
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