最終楽章 ― 協奏曲

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 人間は何をするかわからない。大切なものを失った時、感情に任せて何かを壊して、また何か失うことだってある。  多分それを、避けたかったのだ。またお互い、傷つかぬようにと。  だからずっと、黙って探していた。 「だけどさ、見つかんなかったよ。いくら探しても」  もしかしたら探し方が疎かになっていたのかもしれない。会うことを、恐れて。 「会わなきゃいけないってわかってたんだけどさ……」  怖くて。自分が傷つくんじゃないかなって。 「ごめん……自分勝手だよな、こんなの」  そう言って悲しげに笑う隆秋の頬に、詩音はふっと手を伸ばした。
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