最終楽章 ― 協奏曲

20/20
前へ
/363ページ
次へ
「隆秋」 しかし今度は隆秋が名前を呼ばれ、詩音は足を止めた。 「電車、もうすぐ来る」 「いいよ、次を待てば」 そう告げれば、詩音はてかてかと隆秋の隣に戻ってきて、その手首を掴んだ。 恥ずかしそうに明後日を向く詩音を見ながら、隆秋は小さく笑った。 やっぱり、一緒のほうがいいかもしれない。この手の温もりを、ずっと近くに。 「行こうか」 「うん!」 詩音が笑顔で頷くと隆秋も笑顔を返した。 二人の間に、秋風のような冷たい風が吹き抜けると、顔を見合わせて、また二人でクスクスと笑った。 無情のピアノ姫 ―完― 2009/01/25 By 蓮咲紗夜
/363ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9535人が本棚に入れています
本棚に追加