番外 ― 日溜まりの行方

3/11
前へ
/363ページ
次へ
 恐らくこんな小さな子に死を語ったところで、理解出来ないだろう。  人は人の死に触れて初めてその重さを知るのだから。  仮に彼女に葬式に参列した経験があったところで、なき崩れる遺族をキョトンと見ることしかしていなかっただろう。  いくら人の死に触れたところで、年齢からして死を何か別のフレーズに変換出来るほどの語彙も持ち合わせていないだろう。  だから詩音は簡単な言葉を選んだのだ。  蟻を潰してはいけない理由を、死んでしまうから、ではなく、痛いから、と。
/363ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9535人が本棚に入れています
本棚に追加