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「私もッ‥逢えて良かった‥!」
頬に添えた手を小さな両手が力強く握り返されるのを感じる。
「‥‥良かっ‥た‥‥」
「少し休ん、で‥ッ…」
堪らずしゃくり上げ始めた秩をなだめるように優しく微笑む。
「‥ゴフッ‥‥そ、言え‥ば‥土方、さ‥から‥の手紙‥来て‥ゴホッ‥ッ‥」
「‥また起きて‥読んだらいいじゃない‥!」
「そう、です‥ね…」
段々重くなる瞼。
「‥ッ!?‥‥沖田さんッ!!」
どこか遠くに秩の叫び声を聞きながら先日土方から来た手紙をまだ読んでいなかったな、とぼんやり考えた。
近況が書いてあるだろう手紙の内容が今更ながら無性に気になって
薄れゆく意識の中で最期に想うのは矢張り彼らの事。
生きて再び逢う事は叶わなかった
だから
たからせめて、と切望する
タマシイ
離れた距離を越えて想いだけは貴方達の傍らに寄り添う事が出来ますようにと―――‥‥
麗らかな初夏の風が舞う日、総司は仲間達と共に駆ける姿を瞼の裏に描きながら静かに瞳を閉じた。
完
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