4/5
前へ
/30ページ
次へ
 夕食も外で食べる事になった。早くしないと混んでくる。  今度は、カウンター席以外にテーブルがわずか5つしかない小さな食堂だ。  カウンターの上には、お惣菜がいっぱい入った大皿が所狭しと並んでいる。メニューとそれを見比べていると、シゲが声を出した。 「『日替わり定食』と『今日のおすすめ』違うのか?」  普通違うと思うんだけどな……  一瞬きょとんとして、次の瞬間笑い声をあげたのは、カウンターの中にいる50代半ばらしいおばさん。 「あんたさん、おかしな事言わはるな。 『おすすめ』はぶり大根、『日替わり定食』は鶏の唐揚げの定食どす」  けらけら笑いながらそう言われて、驚いた顔をする。 「おばさん、関西の人?」  私が声を掛ける。 「そうですねん。わからはります?」  話をしている間にシゲが注文する料理を決めたらしく、丁度手の空いた店員に話掛けている。……私も早く決めなきゃ! 「注文、お決まりですか?」 「……っ みんな美味しそうで決まらない! うーん、どうしよう?」  半分悲鳴みたいになる。  散々迷って決まったのは、『今日のおすすめ』の定食にお浸しを一品付け加えたもの。  彼はもう半分近く食べ終わっていて、それでも、私が食べ終わるまで待っていてくれた。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

121人が本棚に入れています
本棚に追加