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次に連れて行ってくれたのは、街中にあるバー。
意図して建てられたのか、それとも何年も放置していたのか、小汚い外見のドアを開ける。
「此処は、俺の行きつけのバーなんだ」
そう言いながら入って行くシゲに着いて行くと、小汚い外見とは裏腹に、落ち着いた内装が目に飛び込んでくる。余りわからない筈の60年代辺りの曲が耳に優しい。
「いらっしゃい」
穏やかな声を掛けられてそちらを見ると、シゲとそう歳の変わらないマスターらしい人が笑顔を向けてくれた。
「木島、珍しいな。彼女連れか?」
「ん、俺の奥さん」
シゲは、淡々とした口調でそれだけ言うと、カウンター席に座る。
「あ、夏樹です。よろしくお願いします」
マスターに挨拶する。
「ナツ、こっち」
シゲが私を呼びながら隣の席を指差している。
シゲの隣の席にちょこんと座るのを待っていたのか、マスターが声を掛ける。
「何を飲む?」
「いつもの」
「奥さんは?」
「軽めのください」
マスターが手際良くカクテルを作ってくれる。出来たのは、ピンク色の綺麗なカクテルだ。
「美味しい」
「ありがとうございます」
マスターは、穏やかな笑顔でそう言うとにっこり笑った。 私のより先に出てきた水割りらしい飲み物をちびちび飲んでいるシゲ。
私も隣で少しずつ飲む。綺麗な色なので、無くなってしまうのが惜しい気分だ。
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