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 シゲ達が『凛』『凛ちゃん』と呼んでいたのは、黒澤緒凛(クロサワ・オリン)。28歳──私と同い年──。専務をしている彼は、黒澤財閥の長男で次期社長。確か、高校生か大学生の可愛い彼女がいたはずだ。  ふと気付くと専務とマスターがくすくす笑っている。 「アツアツですねぇ」  専務の冷やかすような声。  真っ赤になった私をシゲが抱き締めた。 「いーだろー リンリンも早く結婚したら?」 シゲが真顔でそう言う。 「…………っ! 先輩! だーかーらーっ!」  専務が真っ赤になって怒鳴った。  私の顔が熱くなる。シゲの顔を軽く睨むが、彼は涼やかな顔で私を抱き締めたままでいる。 「ちょっ……、 シゲ、人前で抱きつくなって言ってるでしょ!」 「けち」 「けちじゃない!」  ──意味違うし。 「人見てるから、離して?」 「減るもんじゃなし」 「私が恥ずかしいの!」  そう私が言うと、シゲがしぶしぶ私から手を離した。  結局、シゲが時々思い出したように 「凛ちゃん邪魔」  と言いながらみんなで楽しく話をしている。  ふたりっきりじゃないけれど楽しい時間が過ぎていった。
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