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シゲ達が話す声を聞きながら、2杯目の綺麗な紫色のカクテルを手にする。
彼等が時々私にも話を振ってくるのは、私を退屈させない為だろう。
気にしてくれるのが嬉しい。
「ナツ、飲んでる?」
「飲んでるよ」
私はカクテルをひと口飲んでみせる。
「なら、いい」
にっこり笑ってそう言うと、更にひとこと。
「あんまり酔うなよ?」
──心配は……そこ?
カクテル2杯でそこまで酔うかっ!
──脱力しちゃうよ?
甘いムードを期待した訳じゃないけれど、やっぱりシゲじゃこうなるのかな。
「酔ってないよ」
「その割に、ほっぺがピンク色。可愛い」
不意に頬にキス。顔が熱くなる。
「やっぱりアツアツだねぇ」
専務の意地悪い声。
「やっぱり凛ちゃん……邪魔」
シゲのムッとした声。
「はいはい、お邪魔虫は退散しますよ──先輩には敵わないなぁ」
専務は苦笑しながらそう言うと、会計を済ませて出て行った。
少しの間そのままふたりでいて、会計を済ませて外に出る。
──ひんやりする。
昼間よりも風が冷たい。けれどそれが、お酒の所為か火照った身体に心地良かった。
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