2/4
前へ
/30ページ
次へ
 出会いは、最悪だった。何せ、私が失恋した時だったから。始まりも突然だった。デートも何もかもすっ飛ばして、『結婚』だったから。 ───── 「ただいまぁ」 「おぅ、お帰り」  私より先に帰っていたらしく、台所から声がする。おまけにいい匂いがしている。 「今日は、何?」  リビングから声を掛ける。 「肉じゃがとひじきの煮物。 その前に! 着替えて、手を洗う!」  淡々とした口調で私に指図するこの男、私の夫のシゲだ。 「はぁい」  言われた通りに、慌ててラフな服に着替えて手を洗うと、シゲのそばに行く。彼が手際良く料理を皿に盛り付けていくのをテーブルに運ぶ。  当番制でやっている訳ではない。私がやると、どんな料理になるかわからないからだ。 「美味しい」  そう言って食べる私を、ものすごく嬉しそうな顔で見るシゲ。これで2つくらい私より上だと言うのが信じられない。  そこが好きなんだけどね。  『好き』だと言ってやらない。言うと、調子に乗って抱き付いてくるから。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

121人が本棚に入れています
本棚に追加