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 料理が一通りできて、きちんと職についているからといって女の子にもてるというものでもないらしい。シゲを見ていると良くわかる。  ぼさぼさ頭で無精髭、よれよれの服に曲がったネクタイ。まるで乞食(こじき)みたいな身なりなのだ。──絶対に女の子に見向きもされないタイプだろう。おまけに、毒舌スナイパーなんて異名も付いてるし。  会社も良く解雇しないものだ。それだけ有能なのだろう。実際、彼の所属している『黒澤不動産建築部設計二課』は、別名『変人課』の通り変人でも腕前はかなりの人間が揃っている。  ちなみに私は、『黒澤不動産営業部営業三課』の課長だ。  ──そう、部署は違うが同じ会社なのだ。  シゲが食後の片付けをしながら、お風呂のお湯を入れる。  私は、その間に家に持って帰った仕事を片付ける。 「ご苦労さん」  片手に私のマグカップ、もう片方で自分のを持ってシゲが私の隣に座る。カップの中身は、コーヒーだ。  自分の前の仕事をテーブルの隅に片付けると同時にカップが私の前に置かれる。 「明日休みなんだから、ゆっくりすればいいのに」 「うん、でもね…今日中にやっておきたいの」 「ふぅん……」  そう言うと、こくんとコーヒーを飲む。のんびりしているシゲに、不意に不安になった事を聞いてみた。 「ねぇ……お風呂のタイマー付けた?」  なぁ~んかコワイんだけど? 「あ……忘れた」  ……………っ!溢れてないかい? 「お湯がもったいないでしょ?」  とりあえずツッコンでみる。 「一緒に入ればおんなじデショ?」  さらりととんでもない事を言うと、私の腕を掴んで私を立たすと、更に抱き締める。  私の顔が一気に熱くなる。真っ赤になっているんだろうな。そこに更に赤くなるような事をシゲは、やってくれた。 「可愛い。大好き」  耳元で甘い声で囁いたのだ。
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