プロローグ

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 雨だからというわけか、身に染みる寒さに震え上がる。これだったらタクシーで行ったほうが良かったか、と思ったがすぐにその考えを撤回させた。  今日は自分の車を車検に出してしまったため、明日にならなければ新しい車はやってこない。夕方まで天気が良かったため歩いて帰ろうと思い、会社を出てみれば数十分もしないうちに雨が叩き落ちてきた。  これ幸いというべきか傘を持ってきていたため雨に濡れるという心配はなくなったが、どこか鬱蒼(うっそう)とした気持ちが自分を襲う。  少し苛立ちながら雨の中を歩いていくと、ひらひらと薄桃色の花びらが足元に散らばっている。何事だ、と空を見上げてみると満開の花の木が目に焼きついた。 ,
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