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そうして少女は、ビネノアの読んでいた本に視線を落とす。
そこに書いてあったのは、自分の言った言い伝えが、自分の『種族』に伝わる伝説が書いてあった。
「あと言い忘れてましたが、『ここにいる』のはピリコでなく、ミラですの。本名で呼ばれたらこの姿の意味が無くなってしまいますの」
「……誰が見てる訳でもないだろ」
ビネノアが苦笑を浮かべたその時――ビネノアの目の前のテーブルに小さな魔方陣が浮かび上がった。
月光のように淡く輝きながら、光の粒を放ちながら、魔方陣は燦々と輝いている。
突然の魔方陣に、しかしさほど驚いた顔をしないビネノアとピリコ。そうこうしてる間に魔方陣は消え、それが出ていた場所には手紙のようなものが落ちていた。
「上からの『依頼』……いえ『命令』かしら。どちらにせよ、私には関係のないものですわね」
それでも気になり、ピリコはビネノアに近付く。
「ちょっと見せて下さいですの」
内容を読み、少しして――
「これは……」
ピリコは笑みを浮かべた。楽しそうに、愉快そうに、面白そうに。にやついた顔のまま、ビネノアの方を見やる。
「私、すごくいい事を思い付きましたですの。ロン様の事も『伝説』の事も、手紙の『命令』だって一気に片付けられるかもしれない、素晴らしい事を思い付いたですの」
ピリコの思い付いたそれを聞いた直後、ビネノアは信じられないものを聞いたような顔をした――
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