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『おぃ!』
急に開けられるドア。
大きな声に反応して寝ていた美帆がまた泣きだす。
『これから飲みに行ってくる。』
そこには機嫌良く笑う旦那がいた。
美帆の泣き声に怒鳴り声をあげていた時とは別人だ。
『わかったよ。いってらっしゃい。』
由香も精一杯の笑顔でそう答える。
笑顔で送り出さないと旦那が暴れだすからだ。
――バタン。
ハァ…やっといなくなった。
泣いていた美帆も部屋が静かになるとまたゆっくり目を閉じて眠りだす。
旦那は冬の間仕事が無く、かと言って仕事を探すわけでもない。
ただ毎日酒を飲み由香に絡む。
由香はそんな毎日に疲れていた。
初めての子育てに、酒乱の夫。
それでも小さな美帆にそんな疲れた顔を見せないようにと必死に笑顔を作ることで精一杯だった。
由香には頼れる親はいない。
嫌でもこんな小さな美帆を連れて出ていくことも別れる事も出来ない。
今はこの男のそばにいるのが美帆の為だった。
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