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夜の店のネオンに彩られた繁華街を、一際大声で話す酔っ払いがかっぽする。コンビニの前では若者が地べたに直接座り、その前を塾帰りであろう小学生が携帯をいじりながら横切った。
うつろうものとうつろわぬもの。様々な思惑が交錯するこの風景はやはり混沌としていると言わざるをえまい。
昔は昼と夜が明確に分かれた単純な世界だったのに・・・そりゃ犯罪も風変わりする筈だ。
愛車のビートルを帰路に向けて走らせていた橋爪源治郎は、ふとそんな事を思いながら溜め息を吐く。
そこに思っていた以上の疲れが乗っていた。知らぬが仏とは良く言ったもの。途端に体が重くなり、酷使した肩や足、そして何より腰が軋みを上げる。
真っ直ぐ帰って布団に直行したい気分であったが、体を労るのも仕事の一つと、途中で薬局に寄り入浴剤を買って自宅に戻った。
猫の額ほどの駐車スペースに車を止め、その足で長年の連れであるポチの小屋へと向かう。
もう明日にでも息を引き取ってもおかしくない年齢故に吠えて歓迎してくれるほどの元気は無いが、それでも尻尾を振って喜んでくれる愛犬の頭をこれでもかと撫で回す。
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