少年との出会い

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澪は幼い頃に両親を失った。澪の親戚は彼女に優しかったが、しかし他人である人間との生活に違和感を感じ苦悩しながら生きてきた。 両親が亡くなった事件を担当した橋爪は、そんな澪を影ながら支えてきた。妻が彼女を気に入った事もあり、いつしか我が娘と思い接してきた。 それ故に澪も始めは父親として慕ってくれていたと思う。そして、尊敬までしてくれた。血の滲む思いをして解剖学を学び検死官となったのが何よりの証拠であろう。 それ自体は橋爪の喜びであり誇りでもある。だがある日、澪の原動力は尊敬の念だけでは無かったのだと知った。恐らく先の言葉とて少なからず願望を秘めているだろう。 もし出会う事が無ければ、せめて本当の親子であったなら、こんな年寄りに固執する事無く今頃幸せな家庭を築き上げていた筈である。 「ん? どうしたの? もしかして惚れ直しちゃった?」 「・・・はあ」 「溜め息は酷いんじゃない。ま、良いけどねえ。それより晩御飯買ってきちゃった?」 「いや、入浴剤」 「源ちゃんのエッチ」 「なんでそうなる」 呆れながらちゃぶ台に袋を置き、脱いだ上着を澪に強引に取られる。
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