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その上着から簡素な電子音が響いてくる。
澪があからさまに嫌な顔をした。それでも渋々携帯を取り出し差し出してくるところは有難い。
「五十嵐課長さんからみたい」
「直通? まさか、またか!?」
半ばひったくるように携帯を受け取り通話ボタンを押した。
「はい橋爪!」
「うおぅ、気合い入ってるねえ橋爪さん」
「ん? 何か気楽だな、事件じゃないのか?」
「いや、頼もしいと思ってね。残念ながら事件だ。恐らく四人目の被害者が出た」
「また髪が?」
「ああ、どうも切られているらしい」
「死因は?」
「後頭部の頭蓋骨陥没による脳挫傷。また手口が違う」
「そして場所も、だな。とうとうこっちに来やがったか」
「飛んで火に入る夏の虫、と行きたい所だねえ」
不謹慎かもしれないが、嬉しそうに語ってくれる五十嵐がこちらこそ頼もしい。
「直ぐ現場に飛ぶ。場所を教えてくれ」
「ん、それなんだが・・・」
「どうした?」
「橋爪さんにとっては因縁のある場所、だな」
始め言っている意味が分からなかったが、直ぐにピンときた。
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