少年との出会い

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「まあやるだけやってはみるが」 勝手が分からないのは橋爪も同じだ。五十嵐の期待に答えられるか自信が無い。 それに・・・果たして冷静でいられるかどうか。この件は、あまりにあの事件と酷似している。少年の出方次第では、逆に五十嵐に迷惑をかけてしまうかもしれない。 「悪いね。澪ちゃんには後で謝っとくから」 「そういう気遣いは無用だ。じゃあ一旦切るぞ」 五十嵐の返事を聞いてから電話を切る。すると澪が背後に回り上着を着せてくれた。 「頑張って。でも無茶だけはしないでね」 暖かい励ましの言葉は疲れを癒し力を与えてくれた。妻を亡くしてから早数十年。何だか懐かしい感覚だ。やはり守るべき存在が身近に居ると居ないのでは、気合いの入り方が違うようだ。 玄関まで来て見送ってくれた澪に礼を言い、ビートルに乗って署を目指す。途中改めて五十嵐に連絡を取り詳細を尋ねた。 通報があったのは23時30分頃。通報したのは会社帰りのサラリーマン。現場に駆け付けた警官の報告で遺体がまだ温かいと知った五十嵐が周辺の探索を命じた。 現場から十数メートルも離れていない場所に居た少年に職務質問をした所、黙秘されたので身体検査を行った。
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