第八幕:クビキリ

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「ふふ……」 小さく笑い声が漏れてしまう。 コレクションが手に入る直前はいつもこうだ。 気分が高揚して、動悸が激しくなる。 鳴海 瀬良。 長い黒髪は流れるように綺麗で、顔、スタイル共に大人っぽくて美しい。 出会ったその日、音舞が磨きあげてやったかいがあったというものだ。 「……う……あ」 ズリ、ズリと、足を引きずるようにして後退する瀬良ちゃん。 全く、先程の凛々しい表情は何処へ消えてしまったのか。 興醒めだ。 瀬良ちゃんならば、あるいは、昏倒させずとも、最後までその美しさを保ってくれると思っていたのに。 「じゃ……、さよなら」 刃を返し、鉈を振り上げる。 美袋ちゃん同様、まずは眠ってもらおうか――! 「あ……」 「え……」 瞬間。 音舞と彼女の呆けたような呟きが、夜の公園に漏れ聞こえた。 「な……な……っ!」 鉈を握る両手の内、左手首がジンジンと痛い。 鉈は、瀬良ちゃんの側頭部をとらえる寸前で止まっている。 「ありえ、ない……!なんで、あなたまでもが……、こんなタイミングで……!」 強く、締め付けるような痛みが左手首を襲う。 それは、一人の人間の手に押さえつけられている痛みだった。 「あ……ああ……」 腰が抜け、尻餅をついてしまった瀬良ちゃんが、口をわななかせながらその名を呼ぶ。 「し、志紀……くん……」 八雲……、志紀――! 「……間一髪、だったな。瀬良」
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