RAINY DAY3〈傘の下、頬に口づけ〉

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三次会はカラオケになった。 君と外へ出た僕は、 君の傘に入り込んだ。 「ちょっと」とびっくりして君は言った。 「だって、雨降ってるし」 「えー」 「まあ、気にするな。行くぞ」 僕は君と歩き出す。 この時、仲の良い同僚の男(彼は仮に中村としとおく)も送別会に参加していて、僕らは三人で一緒に三次会のカラオケへ向けて歩いた。 中村には、僕が恋してしまった事を話していた。 彼も既婚者で、三児の父で、過去に不倫をしていた事があった。 三人であれこれ話ながら、小雨の降る繁華街を歩いた。 他のメンバーは、なかなかやって来ない。 先にたどり着いた僕らは、カラオケ店の前で皆が来るのを待った。 僕は君と同じ傘に入り、中村は少し離れた場所で雨宿りしながら、煙草をくゆらせ、君と話をしていた。 突然。 君の頬に触れた。 君はひゃっ、って短く声を上げる。 君の頬に触れたのは、僕の唇。 「それはないよ~」と、怒ったように、困ったように君は言い、僕は笑って誤魔化す。 「酔ってるからだと思ったよ」後に君は言った。 「好きが限界に達したんだよ。あの日」 僕は言う。 ともかく、 僕と君の共通の概念として、 全ての始まりはこの日だった。 雨は降り続いている。 レイニーデイ。
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