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これを書いている今より1年と6ヶ月前。
僕は24歳で、
君は19歳だった。
僕らは北海道の両端で産まれ育ち、そして同じ会社に入り、お互い転勤で、この街へやって来た。同じタイミングで。
僕は、妊娠していた妻と、息子を連れて。
君は、母と妹と離れ、一人ぼっちで。
ねえ、僕らは確率を超えた、可能性の中で出会った。
僕にはね、それが必然に思えるんだよ。
君とは出会うべくして出会ったのだと。
初めは、ただの同僚だった。同じ店舗で働き、ふざけあって遊んだ。
「きもいんだけど」「うざいんだけど」とか、良く言われてた。
友達みたいだったよね。波長が合ったのかな?
好きだったよ。
はじめから君の事。
でもさ、異性として意識はしていなかった。
だから、家族の話とか、子供の話とか、してたよね。
君は遠距離の恋人の話をしてた。付き合って、一年くらいの彼氏の話。
楽しかった。
彼氏に内緒で、たまにご飯食べに行ったり、カラオケ行ったりしてた。
アドレス交換はしなかった。君は言っていた。
「今、毎日連絡とる男の人なんて出来たら、そっちの方いっちゃいそうだもん」
「なるほどね。遠距離は寂しいよね?」
「寂しいけど、好きだから。好きなままでいたいから、誰にもアドレス教えないんだ」
だから、僕はアドレスなんて聞かなかった。
それで、僕には十分だった。
これを書いている今より1年と6ヶ月前。
僕は24歳で、
君は19歳だった。
丁度その頃、僕は毎日君に会うようになった。
夢の中で、僕らは毎日一緒にいるようになっていた。
平凡な日常が壊れる音を、僕は聞き逃していた。
雷の音と光の様に。
君の顔を思い浮かべた、そのすぐ後に、僕は気付いた。
僕は、君に恋している。
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