RAINY DAY

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これを書いている今から約1年前。 雨が降っていた。 それほど強い雨ではなくて。 小雨が、しんしんと。 僕と君は、上司の送別会に一緒に出席した。一次会はなかなか君と話せなかった。 他に、仲のいい人なんていないし。 君もそれを知っていたから、僕は君に言った。 「二次会、一緒に座ろ? ほら、俺喋る人、あんまりいないし」 「いいよ。ウチも喋る人いないし」 君は僕の意図になんて気付かず、言った。 二次会からは、断然楽しくなった。 上司とのコミュニケーションも、何もかもどうでも良かった。 君が隣にいたから。 君とばかり喋った。 「イケメン多いね、この店」君は言う。 「確かに」僕は認めざるを得ない。「でも、可愛いコもいるよ」 「ウチの方が可愛いし」 「いや、それはない」僕は笑う。 でも、 当たり前に 君が一番可愛いよ。 今でも。 二次会は徐々に盛り上がりを見せる。 社交的な君は、席を移動し始めた。 非社交的な僕は、迷って、迷って、酔いも手伝って、君の側に行った。 今思うと、なんで君は全然僕の気持ちに気付かなかったんだろう? やっぱり僕が結婚していて、だから僕を異性として認識していなかったんだろうね。 僕だって 戸惑っていたくらいさ。 こんなに誰かを好きになったのは、5年ぶりだったから。 忘れてたよ。 こんな気持ち。 びっくりしたよ。 自分の中に、 今もまだこんな気持ちが残っていた事に。
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