第1話:非血縁な君

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何を言われたのか、ちゃんと分かったはずなのに、俺の身体は鉛のようにその場を動かない。 「…さよなら」 自分を囲い込む俺の腕をくぐり抜け、彼女は自由の身となった。 少し上擦った声は、心を真っ白にさせる消しゴム。 「……――あぁ…」 耳に届いた別れの言葉に、俺はただ肯定するだけの返事しか出てこなかった。 彼女は一瞬振り返り、切なそうな顔を見せて走り去る。 靴が廊下を弾く音は、段々と小さくなって消えた。 「…はっ」 笑いが込み上げてきた。 「何度目だよ…俺」 足の力が抜け、しゃがみ込む。拭えない嫉妬心。 静寂に包まれた廊下で 一人。 この光景は前にも何度か目にした。 同じ事を繰り返す、学習能力のない自分に嫌気がさす。 「……ただいま」 いつの間にか家路についた俺は、覇気のない声で玄関のドアを押した。
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