トラウマ

2/6
前へ
/94ページ
次へ
帰りのチャイムが鳴り響く中、小川瞬は大きく伸びをした。もう少しで天井に手が触れそうだ。 「なあ瞬、帰りにナベん家寄ろうぜ。アイツから金借りてんだよ」竹本要は、瞬の腕を乱暴に掴んだ。 「行かないという選択肢はないのか」 「あったんだが、学校来る途中に落とした」 「意味分からん」二人は笑った。 竹本要とは中学からの仲だ。当時の要は相当のバカで、「名前一文字漢字同盟」という謎の組合いを作り、たくさんの人を困らせた。瞬は、その被害者の一人だった。 しかし、今も組合に入っているのは、瞬と要を含む三人だけで、もう一人は違う高校に行ってしまった。逃げたのかもしれない。 瞬と要は教室を出た。 「テストは学生の敵だな。あの紙を作るために何本の木が伐採されたのか分からんのか。教育委員会は鬼だな」要は愚痴を吐いた。 「授業中、紙飛行機を作る男が言う言葉か」 瞬は上履きを脱ごうと、足に手を掛けた。 その時―― 「小川君、ちょっといい?」 女子に腕を掴まれた。
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加