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帰りのチャイムが鳴り響く中、小川瞬は大きく伸びをした。もう少しで天井に手が触れそうだ。
「なあ瞬、帰りにナベん家寄ろうぜ。アイツから金借りてんだよ」竹本要は、瞬の腕を乱暴に掴んだ。
「行かないという選択肢はないのか」
「あったんだが、学校来る途中に落とした」
「意味分からん」二人は笑った。
竹本要とは中学からの仲だ。当時の要は相当のバカで、「名前一文字漢字同盟」という謎の組合いを作り、たくさんの人を困らせた。瞬は、その被害者の一人だった。
しかし、今も組合に入っているのは、瞬と要を含む三人だけで、もう一人は違う高校に行ってしまった。逃げたのかもしれない。
瞬と要は教室を出た。 「テストは学生の敵だな。あの紙を作るために何本の木が伐採されたのか分からんのか。教育委員会は鬼だな」要は愚痴を吐いた。
「授業中、紙飛行機を作る男が言う言葉か」
瞬は上履きを脱ごうと、足に手を掛けた。
その時――
「小川君、ちょっといい?」
女子に腕を掴まれた。
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