トラウマ

4/6
前へ
/94ページ
次へ
「すっ、すいません!許してください!」 瞬は力強く教室のドアを開けた。 「あっ!待って!」 瞬は、廊下を全速力で駆けた。瞬が本気で走る時は、この時だけかもしれない。 「はぁー、びっくりした」瞬は深く溜め息をついた。 「しゅーんー君!一緒に帰ろう!」要が後ろから小突いてきた。「好きよ、瞬君!」 「お前、盗み聞きしてたのか」 「違ぇーよ。ただ、聞いていただけだ」 「一緒だボケ!」瞬は要の頭を叩いた。 渡辺に金を返した要は、やっぱりあの話に首を突っ込んできた。 「しかしあんな可愛いのをフるとは、お前は理想がどれだけ高いんだ」 「甘いな要。女は顔じゃない、中身だ!」 嘘だ。本当はそんなこと思っていない。かといって、顔が女の全てと思っているわけでもない。 俺は、女が怖いのだ。
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加