千夜の涙

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 指からすりぬけて、くせ一つない。彼女の漆黒の髪が、さらさらと氷鬼の腕を流れていく。  一生この手には入らないと思っていたもの。ずっと大事にしていきたいと思った宝。  それがいまここにある。  小さな唇から甘い吐息がもれた。
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