千夜の涙

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 あの、寒々しい粗末な藁葺[ワラブ]き小屋のような家に住む少女に。  だが、氷鬼は迷っていた。  あの少女の側にいることを。  生まれがち体の弱いあの少女は、床に伏せっている父を看病するために、手を赤く染めながら冷たい水を汲み、内職をしては薬を買いに町まで出かけて行った。
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