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静まり返った闇。
窓から入る光はたいして意味を成さない。
時刻的には昼を過ぎた位なのに窓の外には暗雲が立ちこめる。
もうこの時点でここが我々の住む世界とは違う事を物語る。
そこへまだ二十歳前ほどの若い、しかし声の質からおぞましさを感じる笑い声が響く。
「ククク……クハハハハハハ!!!」
闇が支配するこの空間にて、声の所有者が何処にいるのかもわからない。
「ついに……俺は『レネシス』の王になった!!」
既に暗い部屋が更に深い闇に包まれる。
「ここまで至る為に……どれほど時間を費やしたか!!後は……あの世界を手に入れるだけだ!クハハハハ!!!」
「若様……計画の進行状況を伝えに参りました。」
新たに現れた皺がれた声の持ち主もどこにいるのかわからない。
「よう、じじぃ。順調だろうな?」
年の差を無視した口のきき方で見下したような言葉を投げ掛ける。
「は…。無事、五万五千冊の<手帳>があちらの世界に送り込まれました……。」
消え入りそうな声で老人らしき人物が応答する。
「オーケーオーケー。順調ならそれでいい。」
どうやら納得したらしい闇の声は満足そうに答える。
「ただ、少しおかしな事が……」
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