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「ぁあ!?何しくじったんだ?」
顔色は分からないが明らかに不機嫌な声色はわかる。
「五万五千冊は確かにあちらへ送り出しましたが、確認証明書には五万五千『一』冊とありまして……」
闇の声の機嫌を伺うように押しの弱そうな声で言った。
それを聞いた闇の声は「なんだ、そんなことか」とつまらなそうに呟いた。
「その程度ならよー別に構いやしねぇよ。一冊二冊余分に送っとけば確率は上がるわけだしな。」
「左様ですか………」
「報告が終わったならとっとと失せやがれ。目障りだ。」
少しドスの効いた声で唸る闇の声。老人は「それでは失礼します」と弱々しい声で一礼し去った。
「…………クククク、時間こそかかったがこんなにもあっさりと俺の手中に入るとは、案外容易なもんだな、ぇえ?『女王様』よ?」
「………………。」
女王様と呼ばれた女性は暗闇で見えない玉座の向かい側から、少なからず殺意を押し殺した悔しげな表情で闇の声の持ち主を睨み付けていた。
「もしかすると『天上世界』も容易く乗っ取れそうだよな?」
「……………!!!」
予想外の台詞に驚きを隠せない女性。
更に追い討ちをかけるように陽気な、人を完全に見下した口調で淡々と喋り続ける。
「果ての先にゃ、神様も殺せそうだしな。あるいは聖母とヤれるかもしれ………」
「そんなことが許されると思いますか!!?口を謹んでください!!!例え偽りの称号でも『現国王』の言うことではありません!!!」
思わず、後先省みない怒声を放つ女王。
言った後にしまった、と口を押さえたが既に遅かった。
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