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「………おい、誰に口きいてんのかわかってんだろうな?」
玉座から立ち上がり、ゆっくりとゾンビが歩くが如く足取りで女性の元へ向かう闇の影。
意を決したのか睨み付けるのを止めない女性。
「てめぇの口から出たんだから分かってるはずだよなぁ? 俺は誰だ?」
女性の前で立ち止まり、彼女の顎をむんずと掴む闇の影。
恐る恐る、しかしそれでも意志の籠もった目を相手に見せ付けながら答える『女王』。
「げ……現国王……」
「分かってんじゃねぇか!!あぁ!!?」
バキィ!!!
相手が女であるにも関わらず拳で殴りつける闇の影。その口元にはサディスティックな笑みが浮かんでいた。
女王はその場に崩れ落ち、殴られた頬を押さえてうなだれる。
「次そんな口聞いたらな、『魔手記』取り上げた上で奴隷になるかてめぇの親父みたいに殺してバラバラにした死体を他の国の腐った頭した国王に送り付けるかどちらか選ばせっからな?」
「くぅぅ………。」
この男ならどちらでも本気でやりかねない。その位の実力があるからこそ、自分の父である前国王を倒したのだ。
迂濶に口走り、凄惨な目にあわないためにもこの男の言うとおりにしなければならなかった。
「ま、気分次第じゃてめぇの希望とは関係無しに前者の方実行しちまうかもな! ギャハハハハハ!!」
下品な笑いにより心を押し潰されそうになるプレッシャーと怒りを抑える女王。
「あばよ!俺ぁ一休みするぜ。案外玉座ってのは固ぇもんなんだな。一応言っとくが寝込み襲おうなんざ考えんなよ?さっき言った事よりひでぇ事になんぞ?」
そう言って闇の影は眠そうに欠伸しながら王の間を後にした。
「……………お父様、私は一体どうすれば……」
自分の腑甲斐なさにただただ嘆く女王。
闇の影が去った後の王の間には女王のすすり泣く声が響くのみだった………。
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