†開かれた物語†

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 真っ直ぐ心の奥底までも見透かされそうな澄んだ瞳。  一点の曇りもない薄い藍色。  浅葱色。  縹色。  透明に近い湖のそれに似ている。  何を想っているの?  誰を見つめているの?  問い掛ける声は音にはならず繰り返される。  見つめる先。  淡い微笑みを湛え、自分を見つめ返してくる。  その優しさに満ちた口元が動く。  『リ・リ・ィ』  あなたは誰?  誰を呼んでいるの?  揺れる短い髪色は晴れた空のような色。  幸福を呼ぶ鳥の青。  限りなく広がる大海原の碧。  切ない想いを纏って流れ落ちる涙の蒼。  思わず触れて見たくなる。  手を伸ばせば届きそうなのに届かない。  少しの風も感じない。  遠ざかる。  『リ・リ・ィ』  誰?  誰なの?  今すぐにでも側にいきたいのに。  抱きしめたいのに。  
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