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第三章 落胆
俺たちは食料保管所に向かった。
しばらく歩くと、目の前には町が広がっていた。
「町に出たか…」俺は嫌な予感がした。
「早く食料保管所探しちゃお」俊哉は待ちきれない様子でじたばたしている。
「俺もその意見に賛成だ。どこに敵がひそんでいるかわからないしな…」
大地のその言葉でみんなに緊張が走った。そう、これはデスゲームなのだ。
腕輪の地図によると、あと300mほどで着くようだった。
その時!右の方から叫び声と怒号が聞こえた。
まだ声がした所までは距離があるようだか、こちらに近づいてきている。
「アカン!その家に逃げ込むんや!」弘樹がみんなに促す。
「助けなくていいの?」
「沙織、今はそんな事言うてる場合やない!」
「でも…」
「いいから、自分の命の方が大切やろ!それに、沙織が死んだら悲しむ人もおる!その人達を悲しませたらアカンのや!」
弘樹の必死の説得に沙織も家の中に逃げこんだ。
俺たちは家の中で、ただ震える事しか出来なかった。
その時、叫び声がし、そして静寂が訪れた…。
俺たちはみんな分かっていた。先ほどの人が… 死んだということに…。
沙織は涙も流すことも出来ず、顔面蒼白で驚愕としていた。
「信じたくないが、ゲームは確実に始まっている。そして…、俺たちも参加者なんだ…」
大地がそういうと、俺たちは静寂の中にいた。
誰一人として、まともに話せる者はいなかった。
恐怖で声が出なかったのだ。
俺たちの心は、死の恐怖というものに支配されていた。
デスゲームは確かに始まっている。
俺は、今まで明るく輝いていた青空が、どんよりと暗くなっている様な気がした。
そして、それは俺たちの心を写し出したものだった…。
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