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「プラチナ!」
「……え?」
自分を呼ぶ声に少女が振り向くと、目を血走らせた男が立っていた。
男の手にはサバイバルナイフが握られており、人質のつもりなのか、腕の中の女の首に鋭い銀を突き付けている。
どうやら"プラチナ"を呼んだのは、腕の中の女のようだ。
「……ちっ」
――全く、面倒にも程がある。
少女は男の視線に応えるかのように二人を睨むと、舌打ちした。
「プラチナ! お逃げ下さい!」
明らかに助けを期待している潤んだ瞳で、人質の女は叫んでいる。
「私などの為に、プラチナの御身が危険に晒されてはいけません!」
ならば最初から人質にとられるな――などと、少女が思っていても口に出さなかっただけ、女にとってはマシだった事だろう。
異常な程に落ち着き払った彼女は、人質の女の言葉を無視し、低くはっきりと告げた。
「……要求を述べろ」
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