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「プラチナ、謁見ですか?」
「……ああ」
先程から、そわそわと辺りを見回しながら少女の後ろを付いて歩く女。
さすがに煙たがられている自覚は有るのだろうが、一向に離れない。
目的地が同じなのだから仕方無い事として黙認していたのだが、少女はやがて小さく吐息し、女に問うた。
「……平気か?」
「は、はい?」
緊張した空気を彼女が自ら裂いた事に驚いたのか、女は肩を震わせる。
「……一応、気遣って尋ねたつもりなのだが」
「も、申し訳有りません……」
怯えたように視線を右往左往させながら項垂れた女を見て、少女は自身が恐れられているという事実を再認識した。
「私は構わないが……平気か?」
「はい、お陰様で無傷です」
心配された事が余程嬉しかったのか、女は頬を染めながら頷いたが、"プラチナ"と呼ばれる娘は、盛大な溜め息と共に頭を振る。
「そんな事は聞いていない。突き飛ばされた時に、尻餅を突いただろう。
子供が流れては困る人間が居るだろうと思って、訊いてみただけだ」
「あ……もうお気付きでしたか……」
――こういった手合いの女は、好きではない。
先程より更に気不味そうに目を伏せた女を横目で睨め付け、娘は小さく舌打ちした。
「……"あの男"は、最近は随分やんちゃをやらかしているようだったからな。
お前に種を植え付けるような暇と気力は、是非とも他に回してほしかったが……まあ良い。黙って様子を見ていた私の非も大きいのだから」
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