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「入るぞ」
女が制止する暇も与えず、"プラチナ"は目的の部屋の扉を開け放った。
「だぁれ? 此の女……」
二人の目に真っ先に飛び込んできたのは、天蓋付きの大きなベッドと――その上で戯れる一組の男女。
二人の来訪に気付くと、男は甘ったるい声を出す女の髪を撫でる手を止める。
「左の子はプラチナ。
右の女性は……確か、葉月といったかな」
"確か"という曖昧さで名を呼ばれた女は、瞳を潤ませて唇を噛んでいた。
「プラチナ!? へぇー……あんな子がプラチナ……」
そして、男の傍らの女は、プラチナと呼ばれる娘を品定めするように、頭から爪先に至るまでじっくり観察すると、不服そうに溜め息を吐く。
「……妾の教育が不十分だと見受けたが」
――気位ばかり高い"小娘"にそのような態度を取られる気分は、少なくとも愉快ではないものだ。
"プラチナ"が男を冷たく睨めれば、男は含んだ笑みを浮かべて言った。
「妾なんて大層な物じゃないよ。
それより、何か外が騒がしかったけど?」
「あちらが降伏勧告の使いを出してきたが、当然向こうも駄目元だったのだろうな。突っぱねると、使者は其の場で自尽した。
しかも割腹に失敗してのたうち回った次第だ。
早々に絨毯を新調しなければ染みが残るな」
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