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   深々と降る雪が、そう明かりの多くない夜道を仄かに照らす。 「綺麗ですねぇ……。あ、また積もりませんかね?」 「積もって堪るか。大体、春は間近だってのによぉ……」  そんな場所を歩く男が二人。  一人は、まるで女形のように整った顔立ちが印象的な長身の美丈夫。  もう一人も同じく長身で、女と見紛う顔立ちの男ではあるが、こちらは可愛らしいといった印象の男である。  そして前者はやたらと雪を難じていたが、後者は楽しそうに番傘を回転させていた。 「良いじゃないですか。"蛍雪の功"とは言いますけど、雪の光だけでも勉学が捗ると言うなら、油も節約出来るし、雪は綺麗だし、一石三鳥ですよ」 「ったく、お前はまた妙な理屈を……」  男は呆れたように吐息を漏らしながらも、少し口の端を上げる。 「あはは。ともかく、風流で素敵だと思うってお話です」  だが、へらりと童顔の男が笑ったその時、不意にもう一方の男は眉を顰め、声を落とした。 「そうかい。……だが、良い事ばかりでもねぇだろ。今の、聞こえたろ?」  彼に軽く小突かれると、童顔の男は笑顔を崩さぬまま頷く。 「四人……否、五人かな。鯉口を切った音って、結構響きますよね」 「……俺は、んな事を笑顔で言って退けるお前が一番怖ぇ」 「それはどうも。どうします? 走りますか?」 「んな必要無ぇだろ。この場で一気に片付けようぜ」 「そうですね。  じゃあ、せーの……」  童顔の男の合図で二人同時に振り向くと、案の定、五人の男が抜刀し構えていた。 「物騒だなぁ……。まあ、来るならお相手しますけど」  全て予想通りだった所為か、相変わらず笑顔を崩す事も無い童顔男に腹を立てたらしく、五人は一斉に斬り掛かる。 「野郎……!」 「女みてぇな顔しくさって!」 「あはは、よく言われますよ」  だが、勝負はあまりに呆気無く幕を閉じる事になる。  斬り掛かってきた男共が、童顔の男の言葉を最後まで聞いていたかさえ疑問であった。  誰一人として断末魔を上げる余裕さえ与えられず、地面に転がされた五つの身体。 「……あーあ、綺麗だったのに」  それを見下ろす童顔男は、自分の着物に細かい返り血が染みを作った事より、足元の雪が緋に染まった事が不服だったようで、子供のように頬を膨らませていた。  
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