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(…飛ぼう)
穂香は靴を脱いで揃えた
一歩踏み出すと、深い闇の底に更に深い海が見える
もう一歩進む
崖から吹き上げる風が穂香の髪を乱した
大きく息を吐いて胸に手をあてると、自分でも驚くくらい鼓動はいつもと同じ、穏やかだった
むしろ、いつもより穏やかに感じる
(大丈夫、これで良いんだ)
唇をぎゅっと噛み、自分のつま先を見る
(…あ…伝線)
下ろしたばかりのストッキングに入った線は、つま先から膝まで伸びていた
そこに手をやろうとして、我に返る
(これから飛ぶんだから、別に良いや…)
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