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「……ママ」
あたしがまんまるパンケーキを頬張る瞬間。
「ママ!」
顔の上にまで持ち上げたパンケーキのシロップが鼻に落ちる。
「ママ……私マリアンだよ。分からないの?」
――知るかい、ンなこと。
構わず食べようっ! ――と思っても、辺りの視線が痛い。痛すぎるっ!
仕方なくパンケーキを置いて状況を確認した。
まず、あたしはお昼のパンケーキを食べようと食堂のど真ん中を陣取っている。
そして目の前には女のコ。
細い肩を震わせて、ひたとあたしを見つめている。
ピンクでヒラヒラのワンピースが可愛らしさ、そして汚れを知らない純真さを増長させていた。
そのコが、あたしのことを『ママ』と呼んでいる。
――……若気の至りは数々あるが。
と言っても、あたしゃまだ二十歳。決してオバハンなわけじゃーない。
一応、尋ねる。
「キミ、いくつ?」
女のコは目をキラキラさせて、
「ママ、マリアンはもう十歳になったよ」
「阿呆かぁぁぁいっ!」
あたしは即座にテーブルを蹴飛ばした。
――なんだこいつぁ、あたしが十歳の時に産んだと言うのか!?
「アンタねぇ! 勘違いにもほどがある……」
「ママは、マリアンのこと、忘れちゃったの……?」
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