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さすがにその場で騒ぐわけには行かない。
あたしはそのまま路地裏へ。
「ママ、どこ行くの?」
あたしは答えなかった。
今日はやたらと風が強い。
砂と髪が口に入って気持ち悪いし、ハットは飛んでしまいそうだ。
あぁー宿に戻ったら、まずお風呂に入ろう!
生足ブーツで歩いているから、また砂塵であたしの美脚に傷がついているかもしれない。
そもそもっ! この世がンな砂だらけだからいけないんだ!
どこ行っても砂・砂・砂!
数百年前まではもっと木々が生えていたらしいし、乙女が砂ぼこりで悩む必要もなかったらしいし!
砂のせいで人の理性でも低下したのだろうか。
――けど治安が悪いのは有難い。
だからこうしてか弱き乙女が『掃除屋』なんて職種を出来ているんだけど……
でも! でもでもでも……
「結局あたしが苦労するんだったら、あたしに世界を選ばせろぉぉお!」
「ママ……なにいきなり理不尽なこと言ってるの?」
突っ込まれて、あたしは眉根が寄った。
ツッコミに不満だったり、今のあたしの苦難はお前のせいだと当たるわけじゃーない。
……今からするんだけど。
けど今はそれじゃなくて、
「キミ理不尽なんて難しい言葉、良く知っているねぇ?」
すると女のコはニコニコと笑う。
「ママに誉めてもらいたくて、いっぱい……いーっぱい勉強したんだよ」
……んーと。きっと本当の我が娘がこんな可愛い姿で可愛いこと言ったんなら、ぎゅーって、ぎゅーっ! て抱きしめるだろう。
――だけど!
「キミ、誰?」
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