【第101話】失意の檻

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「……くく、騎士様とやらも案外甘っちょろいもんだな。 ――敢えて言うのであれば『みせしめ』、だ」 相対する視線を合わせながら、ヴァーミリオンは管理棟・司令室の窓から見える『あの独房』に目を向け、 「――もう夢など見ずに済むようにな」 と嗤い、再び口許を歪ませた。 マスキュリンとアランがこの場所に足を運んだ目的――それは、この場所に忍び込んだであろうゼロの身柄の確保。 アランの友人であるメディーナからの情報も内通していたこともあり、ゼロがコビを助けに、この場所に向かうだろうことを知っていたマスキュリンはその作戦が失敗することを視野に入れていた……いや、失敗すると確信していた。 失敗しても、闇が付け狙うゼロであるならば傷を負うことはあれど命まで奪われる恐れはないと解っていた。 コビは明日の公開処刑が決まっている……つまりは今この場で殺すことは奴らにとっては得策ではない。  騒ぎが落ち着くだろう頃合に何食わぬ顔をして2人を保護できればそれでよかった……はずだった。 仲間を引き連れ、計画を実行したゼロ……計画が失敗したばかりでなく、あまつさえその仲間の変わり果てた姿を見せられれば、開きかかっていたその心でさえも一瞬にして闇に囚われる、……それこそ『仲間と共に諜報省に敵対し、計画を阻止すること』=叶わぬ夢を見ることさえも許されない程の……。 もう諜報省に逆らわず、闇に行くしかない……連中はゼロ自らに運命に絶望させ、そして、希望を全て捨て去らせることで彼の心を捕らえた。
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