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しかしながら、隠し通せるわけがないのも事実。ヴァーミリオンは言葉で押し返すしかない、と判断する。
「仮にその『ゼロ』というガキがここにいたとして、なぜ引き渡さねばならない?」
高ぶる気を鎮めるように、いつもより饒舌になっているヴァーミリオンは部屋を徘徊しながら言葉を続ける。
「ここの法は司令官であるこのオレにある。
突然何の連絡もなしに現れた輩に引き渡すなど!
オレにそのような義務もなければ、そちらさんがそれを言う権利もない」
アランとマスキュリンの顔を交互に見遣りながら、ヴァーミリオンは続ける。
「――そうだろう?」
同意を求めるように発されたその言葉、にやりと上げられたその口角の不敵な嗤い…
話す態度こそ王族、目上の者に対するものではない不適切なものであったが、言っている言葉の内容は筋の通った言い分だった。
だが、マスキュリンは一歩たりとも退かない。
「……では、いるんだな?」
それが聞きたかった、と言わんばかりにマスキュリンはにやりと嗤い、自分の腰に提げている袋から筒状にされた紙を取り出した。
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